iBooks2に思うこと

まいど。
人間ドックいって、ばたばたして、一段落したら風邪引いた。
みなさんもお気を付けて。

iBooks2とiBooks Authorを試してみた。

「教科書の再発明」ということで、iBooks2が発表された。
これによって「紙の印刷はどうなる」って色々言われている。
けれど、このままなら世の中は何も変わらないと思うし、appleの再発明は「利用されない」まま終わると思う。

そう。発明は「利用されてこそ」社会に対して価値がでる。
今はまだその種を見せられたに過ぎない。

ということで、思うことを以下簡単箇条書きに。

iBooks2はバグが多い?

iBooksのサイトからダウンロードできる教科書を入手してみたが、結構バグが多い。
特に多いのがムービー系でメモリの関係だろうか。
ムービーが再生されないままそのあと何も進まない、というケースがある。
あるいはフルスクリーンにした写真が閉じられない、など。

教科書をうたうのなら、こういった作業が止まる現象はあってはならないことだと思う。

iBooks2形式で失われたもの。

いまのところ自分が確認した範囲では「ページをめくる」のエフェクトがなくなっている。
epub形式の書籍では、ページめくりのエフェクトが引き続き使えるので、これはiBooks2形式の仕様だろうか。
本を読むときページをスライドさせて読む事はない。
慣れの問題かもしれないが、どうも物足りないのでエフェクトは「選択できる」と嬉しい。
(現在そういう項目はない)

構造化が失われないのは素晴らしい。

詳しくはHMDTさんのこの記事へ。

■論理と直感とiBooks Author
http://hmdt.jp/blog/?p=417

「再発明」と言うだけの理由の一つはこれだと思う。
横で見るときは「レイアウト優先」、縦で見るときは「文書優先」
そのときに、写真や動画などが内容に紐づいた形で横に表示される。

この機能は紙の本にはできないことで、本当に素晴らしと思う。

例えばだけど。
横でみてたら絵本のような、縦で見るなら文庫本のような。
そういった「読み手に集中したいものをの選択肢を与える」本が今後生まれる事になる。

もう一つ上へ、にはDashcodeが必要。

MacOSXでまったく奮わなかった(と俺は思う)「ダッシュボード」
このウィジットを作るためには「Dashcode」というソフトを使う。

こいつが思わぬ形で復活した。
というのもiBooksにはhtmlを埋め込む事ができるが、その形式は「.wdgt」でなければならないからだ。

そしてこの.wdgtの中身は、html+css+jsだったはず。
Web制作のノウハウがあれば、チャレンジする事ができる分野だ。

逆に言うと「iBooks Authorの機能でできないこと」をやるには、Dashcodeを覚えるしかない。

iBooks Authorは簡単だが、iBooks Authorで本を作るのは簡単ではない

iBooks Authorはkeynoteテイストの非常に分かりやすいアプリだ。
いろんなものを流し込んで、簡単にbookをつくることができる。
でもこれで「iBooks形式の本が増えるのか」というと、それは「NO」だと思う。

これはiBooksやiBooks Authorの問題ではない。
そもそも「本を作る」ということがもつ「難しさ」が問題になってくる。
これをクリアしないと、iBooks形式の本は生まれない。
本が生まれないと言う事は、iBooksユーザが育つはずがない、ということだ。


「本をつくる問題」に直面させてくれる、ということは。
逆にいえば「iBooks Author」は「そこにたどり着くまでの他の問題を取り除いた」とも言える。
むしろiBooks Authorは非常に優秀なソフトだと思う。

「本の読みごたえ」を作るには時間がかかる

実際にテキストや写真を流し込んで使ってみた方は多いと思う。
でもそれをいざBooksにしてみても、Appleがサンプルで配布している「Life on the earth」のような満足感は得られない。

それはなぜか。
やはり本を作るには「デザインのノウハウ、文章や見出しを編集するノウハウが必要だ」ということだと思う。
それがない本は、本の形をしても、魅力的ではない。

本を魅力的にするためには、編集力が必要なのだ。

これは当然一般の方は持ち合わせていない。Web制作のノウハウともちょっと違う。
これらを身に付けるには時間もかかるし「本を作りたい」という熱意も必要だ。
Appleは有る程度のテンプレートを用意する事でこの手助けを考えたが、それでもまだまだ足りないと思う。

日本語市場の不在は直接的な理由には「まだ」ならない

上記のように、いまのままでは「魅力的ではない本」ばかりが作られる可能性が高いと思う。
つまらない本ばかりでは、ユーザは育たない。
本を作るノウハウが盛り上がらないうちは、そこに「本を売る市場があろうがなかろうが」同じだと思う。

ただ市場ができればビジネスが生まれ、iBooksの世界が喚起されるだろうから、あったほうが当然いい。
というか、あるべきだ。
とはいえ、今すぐできても、iBooks本の魅力が「ビジネスベース」まで追いついていないと思う。

iBooksは紙を否定しない

「教科書は紙の方がいい」とあちこちで聞くが、それはそうだと自分も思う。
でも「紙の本の魅力」と「iBooksの魅力」はまったく別だと思う。
だから「紙の魅力がiBooksにはないから駄目だ」というのは、無理やりな論理展開だと思うのだ。

そうでなくても今のままではiBooksは普及しないと俺は思っている。
であれば「紙がいい」と思う人は何も心配する事はないわけだ。

でも。結局どういう形であれ、デジタルブックは普及するだろう。
それがiBooksでなかったとしても。
その時に「紙の本」はどうなるのだろう。

自分としては「デジタルブックで好評だった作品が、紙の本でも出版される」という形になっていくと思う。
「この本は売れたから、紙の本でもっておきたい」というビジネスニーズがだんだん定番化するのではないかな、と思う。

マネタイズできる情報市場を

iBooksにおいて最も重要なのは「その情報をお金にかえること」を可能にしている仕組みだと思う。
今だと例えば

「webで人気のなんとかさんのブログ本」

という感じでマネタイズは可能だ。
でもなんていうか「webは情報がタダ」がベース。
新聞社でもそうだが「有料の購読者」を確保するのがwebって非常に難しいと思う。

それの救いにiBooksはなるのではないかと思う。

正直別に文章がメインでなくていいと思う。
例えば写真の好きな個人が100円でもいいので自分の写真で構成された写真集をうるとか。
あるいは映像作家が映像集を売るとか。
そういう「情報=無料」からの脱出にiBooksは貢献できる可能性があると思う。


その市場を育てられるかどうか。
今現在の答えとして「いまのままではそれは無理」ではないのかな。
そんな風に思う。

だからこそiBooksを自分が作る事には価値がある。
自分の中では「まずは一冊きちんとつくらなければ」と思っています。


更新 2014月05日12 16時30分

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勝又孝幸

株式会社データファーム

FileMakerシステム制作を中心とする「株式会社データファーム」という小さな会社の代表です。2007年から趣味で書いている日記を個人ブログとして現在も続けています。

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