住まいの文化賞に送った文章(賞は落ちた)

まいど。
建築士さんにお願いされて、住まいの文化賞に応募したのですが。
その文章を備忘録として

建てた家はこれです。
https://www.jyukankyo-lab.com/works/2015富士山を望む家/



タイトル:我が家が出来て

現在午後10時半前。妻と子供達は真っ暗で静かな暖かい寝室で寝ています。
隣の部屋でこの原稿を打ち始めたとき、家の中に響くのは小さな時計の秒針がカチコチと動く音だけ。
この部屋も寝室と同じように暖かく、そしてその暖かさは家全体にゆっくりと広がっています。


・我が家の計画

家を建てるにあたり、色々な住宅展示場や見学会を家族と一緒に回りました。
「家づくりとはこういうものだ」ということを、実際に目で見て学ぼうと思ったのです。
家を見るたびに、知ることは増えました。同時にわからないことも増えてしまいました。
自分たちにとっての「これがいい」は、実際に見学した家の中にはなかったのです。

1年を見学会巡りに費やし、その中で「建築会社でなく、設計士に家を依頼する」という方法を知りました。
そうやって視野を広げた時に見つけたのが、住環境研究所さんでした。
最初にホームページの写真をみた時に「良さそう」という感触だけをたよりに、少し遠い家族旅行のつもりで訪問をしました。
そこで社長のご自宅を拝見し「こんな家がいい」と夫婦で感想が一致。
その驚きをきっかけに話をさらに聞いていき、「ここにお願いしよう」ということになりました。

・我が家の設計

実際に家を建てるにあたり、最初に行ったことは設計図を作る作業でした。
私よりも妻の方が具体的なイメージがあったので、それを紙に書いてスマートフォンで写真にとり、エバーノートを使い資料として送信しました。
それが最初のノートとなり、そのノートは引き渡しまでに500枚近くになっていきます。

設計さんからはいくつかの大事なヒントをいただきました。
例えば「一生快適に使える家にすること」
年をとって足腰が弱くなっても対応できるような設計、あるいは病気や怪我をしたときにも対応できる間取りや設計にすること。

例えば「実際の生活シーンを想像して、設計をすること」
入り口を南側にして設計をした時に、北側に直って帰ってきたことがありました。
理由を聞くと「北側から帰宅するので、家のあかりや玄関を見ながら帰宅した方が、幸せに感じると思ったので」とのことでした。

これらをヒントに考えることで、一時的でない「家族の一生を見据えた家づくり」に向き合うことができました。

・我が家の結論

家に対する夢や理想。アイディアに限りはありません。
いろんな設計を試し整えていく中で、取捨選択と整理整頓が形になってきました。
家づくりにおいて自分たちが大事にしたいのは「無理のない、無駄のない」間取りにすること。
部屋数をむやみにとらず、収納も多く作りすぎない。

私たちが作りたいのは「子供が成人し、巣立ち、自分たちが年老いていく中で、無理のない家。自分たちでまかない切れる広さの家」
そして私たちがやりたいことは「その家の中で、楽しく暮らせるようにすること」
たまたま私たちはこういう結論になりましたが、結論の種類は家族の数だけあると思います。

・我が家の方向転換

設計がある程度決まり、方向性が見えてきたところで設計士さんから提案がありました。
「今後の住まいの快適さを考えると、通気だけでは賄いきれない部分があると思います。勝又さんの家を高気密高断熱で作りたい。」
ショックはありませんでしたが、私たちといえば「高気密高断熱」という聞き慣れない言葉が何であるのかわかりませんでした。

すぐにネットで調べました。住まいの仕組みを理解するために色々と考え方を新たに用意し、疑問点があれば考えました。
最終的に「高気密高断熱は自分たちの作りたい家づくりの延長、さらにその先にあるものだ」と理解し、その方向で家を建築していくことになりました。

・我が家のルール

設計をするにあたり大事にしたのは「設計士さんと密にやり取りすること」
我が家の理想は誰よりも設計士さんにお話しました。
設計士さんと話すためには、家族の意見がまとまっている必要があります。
そのために家族とは設計さんと話す以上に話をしました。

家族とは面と向かって話をする以外にもLINEで気になったことを共有したり、参考になるサイトをお互いに教えあったりしました。
図面の上に赤線を引いたりしたものをお互いに共有し、形になったら設計士さんに展開してさらに煮詰めてもらいました。
建築を仕事にしている友人にもいましたが、あえて相談はしませんでした。
設計さんとのパートナーシップをきちんと構築し、純度をあげること。私たちを深く理解していただくこと。
それが最終的に良い設計につながる、と思ったからです。
そして実際にそうなりました。

・我が家の建築日記

建築の方向性が決まり、詳細を詰め、建築会社が決まりました。
予算内に収めるために、最終的に設計図からいくつかの要素を削除し、無事に建築が始まりました。
建築が始まると、通勤途中にある建築現場を訪れては写真を撮り、それもエバーノートに載せました。
設計士、私たち、建築会社。それぞれ3つが一つのチームになるように、建築日記を3者で共有しました。

特に設計士さんは遠方だったため、頻繁に現場に訪れることができません。
その差を埋めるためにも、細かいところまで写真にとっては掲載するようにしました。

・我が家の完成

約6ヶ月の工期を経て12月に我が家が完成しました。
家を建てようと思ってから2年以上が経過していていました。
夜に時間を作って、子供たちと完成したばかりのカーテンもまだ無い家に入ります。
アパートとは全く違った、高くて広くて何もない空間に、子供たちはハシャギまわります。
二人の子供のうち一人は、設計当初はお腹の中にいました。
家づくりの時間を経て、その子供が無邪気にあちこちを走り回っていました。

建物が建ち、子供達が揃い。
我が家が完成しました。


■暖かさの快適

湯冷めをすることがなくなりました。冬の朝に心臓が震えるような寒さがなくなりました。結露もありません。
「あ、冷えるな」と思うときは、ストレスで指先が冷えたりする時でした。
室温が原因の冷えは我が家にはなくなりましたので「冷たい時=ストレス」とシンプルにそちらに気がいくようになったのは思わぬ副産物です。

まだ保育園の小さな二人の子供たちも、冬場も朝から肌着一枚で、元気に家の中を遊びまわります。
お風呂ときに場所を問わずどこでも元気に服を脱ぎ出せるので、今後のしつけの課題が思わず一つ増えました。

一年を通して、エアコンなしの状態で16度から23度あたりで過ごすことができます。
1台のエアコンをつければ、20度前後で1年を通じて過ごすことができ、経済的にも助かっています。
暖かい空気は上に行くので、そのぶんは多少の温度差はありますが、家のどこでもほぼ同じ温度・湿度で快適です。

「家の温度が一定だと季節を感じにくいのではないか」という懸念がありましたが、全く逆でした。
家の温度が常に一定だからこそ、外の暑さ寒さの小さな違いを毎日感じ取ることができます。
ドアをあけるまで外の温度が本当にわからないので、ドアを開けて「今日はこんなに寒いのか(暑いのか)」と驚いたりしています。

冬だけでなく、夏も快適です。
夏が熱くなりすぎることはありません。夏場に数日留守にしても、帰ってきてドアをあけたときに「むわっ」とする空気を感じることはありません。
これは冬場も同様です。夜の冷え込みで家全体が冷え込むことがないので、夜起きて冷え込むこともありません。

夏場はどうしても私たちが体温で発熱しているため、その空気を扇風機などで少し動かしてあげると快適になります。
エアコンを1台20度前後の設定にしておけば、夏場でも寒すぎない室内を実現しています。
脱衣所やお風呂場からも冷えがなくなりました。

家を建てる前に感じたものが今は無くなっているので「あ、こういう冷えがあった!」と思い出しながら書き出しました。
暖かさ・家の温度の快適さについては、本当に満足しています。不満がありません。


■空気の快適

花粉は家の中ではほぼ感じません。やはり外から帰って来れば、多少の花粉でくしゃみがでますが最初だけです。
外から持ち帰った花粉以上を家の中で感じることはないので、その点も助かっています。
朝起きていきなり鼻がムズムズする、ということもないです。


■音の快適

とにかく静かで快適です。静かさの快適の効果は意外に多くあります。
まずは何と言っても熟睡できるようになりました。余計な物音で起きることが減ったので、睡眠の質が上がりました。
子供たちも他の音に気が取られることなく、もくもくと遊びやすくなりました。
物音はとにかく聞こえないのですが、消防車の音など大事な音はしっかり聞こえてくるので助かっています。
車で帰宅した音も、よっぽど注意してはじめてわかるくらいの静寂なので「暮らす音」がしっかりと家の中に響き渡ります。


■狭さの快適

狭さの快適…というのは若干の見栄があるかもしれません。
幼児だった子供ダチがだんだんと少年になるにつれ、家は狭くなってきています。
今の家族の形だけを見ずに「将来子供が巣立ったあと、私たちが年を取った時でも行き届く程度の広さ」を目指しました。
年を取ってあちこち行き届かない部屋や場所ができるだけ出ないように、部屋数を減らし、そのぶん一部屋の大きさを確保できるようにしました。

今後しばらくは「もうちょっと家を大きくしていたら」と思うこともあるかもしれません。
ですがそれは言い換えれば「こどもが無事に成長してる」という証。
今後家がどんどん狭くなることで、家族としての成長や充実を色々と感じることができると思うと、楽しみでもあります。

また、無事に子供達が巣立った後に、広すぎない家を十分に楽しめるように健康に気をつけて暮らしていければと思います。
体への不要な負担を減らして、自分たちの健康をケアしていく。
そのためには「この家がもたらしてくれ快適さ」を家族一同、とてももありがたかく感じています。


更新 2017月11日29 19時13分

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勝又孝幸

株式会社データファーム

FileMakerシステム制作を中心とする「株式会社データファーム」という小さな会社の代表です。2007年から趣味で書いている日記を個人ブログとして現在も続けています。

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