目が覚めて、夢は本当に消えたのか。
今朝、夢が便利だなと思った。いい夢も悪い夢でも、見た夢の跡が残らないこと。長い夢でも、不謹慎な夢でも、ショッキングな夢でも。頭の中で作られた長い映画の撮影現場は、目が覚めた時は全部跡形もなく消えている。
子供がブロックやおもちゃで遊んだ後、「片付けをしよう」と注意することがなくならない。小さなおもちゃの現場でも、片付けにはそれなりの時間と手間がかかって億劫だ。
何かをついくりたい。インスピレーションが降りてきた時は一瞬。作ることには時間がかかるし、片付けにも時間がかかる。作ることは楽しく時間を忘れて夢中になれるが、片付けはいよいよ作業だ。
その点、夢は便利にできている。作る時間こそないけれど、いきなり完成形を味わえる。終わりは突然だが、材料も道具もゴミも。夢の跡は一つも残ることなく、何もかも消えてしまう。
でも今朝。起き抜けにふと思った。本当に消えてしまったのだろうか。起きて目が覚め、夢の世界を立ち去ったから見えないだけで、実は夢の跡は夢の世界に残っているのではないか、と。
夢の世界にも現実の世界と同じように、虫とか微生物とかそんなものがいて。残された夢の跡は、消化や分解を重ねてゆっくりとなくなっているのではないか。
だとしたら。夢の跡はどこにいくのだろう。夢の跡は分解され、空気や水のように雲みたくなるのだろうか。そしてまた、雨のように降るのだろうか。
雨のように降ってくるもの。それが「インスピレーション」なのかもしれない。インスピレーションは夢の世界を飛び込えて、現実にやってくるのだ。
そう思ったら面白くなった。僕らは夢を見る。その夢が巡り巡ってて現実の世界にインスピレーションとして降り注ぐ。そのインスピレーションを頼りに僕らはまた何かを作り、その作ったものに絡めてまた夢を見る。
そういう世界やシステムが、もしあるとしたら。覚めれば一瞬で消えてしまう夢だけど、どんな夢でも世界の役に立っているかもしれない。今朝、そう思った。