長男が麻雀に興味を持ち始めた。
「ドンジャラがしたい」
「麻雀牌だったら家にあるよ」
急な妻のリクエストに、押入れの奥にしまってあった牌のことを思い出した。
高校時代に使っていた、友達と遊ぶための麻雀牌。大学になっても使い、大人になっても時には使い。そして、結婚や子育てを通じて、すっかり使わなくなってしまった。
「麻雀牌、あるなら見たい」
急に長男が口を挟んだ。どこかで聞いたことはあっても、見たことはない「まーじゃん」一度見たいのだろう。
椅子にのって、高いところにある押入れの、一番はじの一番奥。久しぶりの麻雀牌を取り出す。入れ物は少し埃をかぶっていたが、中身は綺麗だ。
ふたには、二十数年前の得点表が挟んである。「こん」とか「つん」とか。あだ名の下に得点。多分大学時代くらいか。懐かしい。
物置から戻り、長男に麻雀牌を見せると、すぐにそわそわワクワク。ニコニコが止まらず、表情が輝いている。
その2日後。
水泳教室や図書館の休館日をはさんで。本を借りたい気持ちを我慢してきた長男。借りてきた本は7冊全部、初心者用マンガ麻雀入門だった。
牌もある。ルールもなんとか。では、いざ麻雀!と行きたいところだが。マットがないのだ。
ゴム製の麻雀マットは劣化すると面倒だ。もう使わないと見込んで捨ててしまったのだろう。
しょうがないので、ありあわせでなんとかしようと、座布団の上で麻雀牌を並べてみたりした。硬くて平らな座布団だったので、牌は倒れこそしなかったが。快適に使えたもんじゃない。
すると後日。長男が100円ショップで大きな緑色のフェルトを2枚買ってきた。角を合わせ、ミシンを使い、黄色い糸で不器用ながらも縫い合わせていく。
「麻雀マットができた!」
麻雀牌を見たときと同じくらいの、長男の満面の笑み。
細かいところは気にしないワカチコな性格。布の合わせがずれていたり、ハサミで切ったところがギザギザだったり、ちょっとたわみがあったり。お世辞にも上手の部類には入れ難い。
とはいえ。自分でなんとかしたいと思って。アイディアを思いつき、自分で考え、材料をさがし、最後まで自分一人で作り上げた。我が子ながら、こんな最高なことはない。偉い、偉いぞ。とっても偉い。
出来上がったマットは、フェルトだけで作られているので、折りたためて収納も便利。滑りも程よく、思った以上に快適なお手製マットに仕上がった。
更新 2023月03日23 14時14分