002-ひとつもない。

まいど。

マイミクさんの日記の中に原爆についての話がひとつもない!
ちょっとびっくりした。

だんだん風化していくのは平和の現れなのかな。日常が滞りなく続くのは素敵なこと。
だけど、なんかこの日くらいは何かを言葉にしないといけない気がして日記を書く。
原爆が落ちてから63年だそうです。もちろんその頃に僕は生まれていない。
だから何も知らないし、言い切ってしまえば日本人だけど、原爆になんのゆかりもない。

でも。今日一日何も言わずに、考えずにいてしまったら。
平和を当たり前に思って、気がつかずに平和を雑に扱っている無神経な自分がいるような気がする。
そういう自分はどう転んでも嫌なので、何もかも分からないままで、何かを書く。


■出会ったのは「はだしのゲン」

小学校の頃に読んだ事がある人も多いのではないか。
自分にとっての「原爆」の初対面は図書室にあった数少ない漫画の一つ「はだしのゲン」だった。
でも今あんまり記憶にはのこっていない。
とにかく原爆の表現がすさまじくて。人がたくさん死んで。
そしてそれに負けずに生きようとするゲンがいて。

今思えば「はだしのゲン」という作品は「原爆を風化させまい」という作者の意図をすごく感じる。
悲惨さも、悲しみも、負けない気持ちも。全てを風化させたくない。
だからこそ原爆は悲惨に描かれたし、ゲンは明るく強く描かれたのではないか?と思う。


■意識したのは「夕凪の街桜の国」

日記を振り返ると2006年にはもう「夕凪の街桜の国」を読んでいる。

夕凪の街桜の国
http://www.amazon.co.jp/dp/4575297445/

今は映画化もされてかなり有名になったけど、自分が知ったのは最初の漫画賞をとったころ。
読んですごく不思議な気持ちになった。

悲しい。けれど心が静かだ。

心が大きく動く様子がみじんもないのに、暗闇に吸い込まれるような悲しみを感じた。
そんな不思議な読後感が話題となってこの本は広がっていったのだと思う。

この本を読んでから、自分の幸せとか生活を「原爆」と結びつけて考えたりした。別に大げさに何かを考える訳じゃない。

「もし今ある生活が一瞬にして消えてしまったら」

そんな馬鹿げた空想を一瞬でもするようになった。
でも、そんな馬鹿げたことが起きた。

それが63年前の今日。


ちなみに夕凪の街桜の国の作者は今、再び戦争の時代を書いている。

この世界の片隅に
http://www.amazon.co.jp/dp/4575941468/


■先人は強烈な答えを出していた。

2006年に「明日の神話」という壁画が復元され公開された。
岡本太郎の書いた壁画だ。
この壁画の公開にあたり、テレビで特番が組まれた。

この壁画、実は「原爆」をモチーフにして描かれている。
原爆後の日本人がいかにして原爆を受け入れ、乗り越えていくべきか。
岡本太郎なりの答えとして描かれたものが「明日の神話」だ。

テレビの特番で彼の言葉が紹介されていた。
それがとっても素晴らしかったので、書き残してある。
ちょっと長いけど、それをここで引用してみる。

世の中を見ろ。
至る所で血を流して戦っている。
憎しみ、紛争、内戦、宗教の対立。
不幸は至る所にある。
人間であるという事は、その痛みを感じるということだ。
そういう悩み、痛みを心の底に抱いて
その上で、笑うんだ。

もし世界が変えられないなら
変えることのできるものがある。
それは自分自身である。

たとえ自分の存在はささやかであっても
生きる喜びは宇宙を覆う。
今、もし、多くの者が誠実に勇気を持って
そして平気で己を変えていったならば
私はこの絶望的と思われている世界の状況
非人間的なシステムを
変えうると思うのだ。

でなければ
なんで人類が生きてきた。
そしてこれから
生きていく意味があるのだろうか。

原爆の事実から我々の運命の大きな部分が出発している。
つまりわれわれ自身が被爆者なのだ。
キノコ雲も見なかったし、被爆もしなかった。
しかし現在、生活をたくましく打ち出し、新しい日本の現実をつくりあげる情熱と力を持った日本(にっぽん)人。
その生きる意思の中にこそ、あの瞬間が爆発し続けていなければならないのだ。



■今年の自分は何を書こう…。

そんなこんなで今年もまたこの日がやってきた。
正直なところ「今年は何を書こう」って言うのが本音だ。

でもはっきり言える事がある。
前は「原爆が落ちて、自分や自分の家族や世界が一瞬で消えたらどうしよう」って空想してみることもあった。
今は普通に「自分や自分の家族がいなくなるのは、困るなぁ」って考えたりしている。
親も年をとって、自分も年をとったからなのかな。

うまく言えないけど、自分の生活を維持すること。守ること。
そういう事は今年になって一気に現実味を帯びてきた。
もはや原爆があろうがなかろうが。それは関係なく。

「生活をきちんと繋げていきたいな。繋げなければ。」

という気持ちが僕の中をけっこう支配している。
今言えるのはそんなところ。

俺ってまだまだそんなもんだ。




今日ももう少しで無事に終わる。
夜な夜なちょっと歩きに行ってみようか。
蒸し暑い夜は今日も平和で、空を見ても零戦の影など見えるはずもない。
いい夜だ。

いい夜があってよかった。
2008年の今日が平和であることは、本当に幸せなことなんだな。
少しだけ噛みしめられたかのように、そう思う。



■過去の8.6

p_blog時代の日記を検索してみた。
その時々でいろんなことを考えているね。


意味が分からずとも、意味を問う人であれ(2007)
http://www.emptyhouse.jp/article.php?id=875

ヒロシマ、ナガサキ。何を自分が考えたいのか。(2006)
http://www.emptyhouse.jp/article.php?id=317


そして衝撃。
最初に偉そうなこといっておいて、2005年は原爆について書いてない!(笑)


タグ【原爆,夕凪の街桜の国,明日の神話】



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勝又孝幸

株式会社データファーム

FileMakerシステム制作を中心とする「株式会社データファーム」という小さな会社の代表です。2007年から趣味で書いている日記を個人ブログとして現在も続けています。

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